まれに、会社による労災隠しも散見されます。
そこで、労災事故が起こった場合その責任や労災保険の対象が
どうなるのか、
考えてみたいと思います。
今回は労働災害の責任について考察します。
1.労災事故が発生した場合に問われる責任には、必ずすべて
というわけではありませんが、下記のようなものが
あります。
@刑事責任 A民事責任 B行政責任 C社会的責任
これらは、労災保険等の申請により療養補償や、休業補償、
傷害補償、遺族補償等が適用されたとしても、それですべてが
免責されるわけではありません。
(労働基準法84条1項)
この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害
補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいて
この法律の災害補償に相当する給付が行われるべきもので
ある場合においては、使用者は補償の責を免れる。
(労働基準法84条2項)
使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一
の事由については、その価額の限度においては民法による
損害賠償の責を免れる。
*この規定により免れる責任は、上記2項の範囲に限られるが、
実際の責任の範囲は@からCまでのようにもっと広く、すべて
をカバーされているわけではないので注意が必要です。
2.労災事故の責任にかかわる主な関係法律
@労働基準法 A労働安全衛生法 B労働者災害補償保険法
C民法 D刑法
これらの法律の該当条項による直接的責任のほかに、判例上
認められている事業主の付随義務としての、「安全配慮義務」
「債務履行義務」等からも多様な責任が問われることに
なります。
3.具体的の求められる補償、責任の内容
@刑法211条(業務上過失致死傷)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、
5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円位以下の罰金
に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
A民法415条(債務不履行損害賠償責任)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は
これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者
の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなった
時も、同様とする。
*民法709条(不法行為による損害賠償責任)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を
侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
B行政責任
労働安全衛生法等により労働災害に付随して各種の報告を求め
られたり、事業場の改善、設備の撤去、事業場の稼働停止など
多様な行政処分、行政指導が科せられます。
また、労働基準法121条、労働安全衛生法122条などで
両罰規定が定められています。
*両罰規定 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者
に関する事項について、事業主のために行為した代理人、
使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても
各本条の罰金刑を科する。
以上の通り、単に直接的な労災被害者の補償費用負担にとどまらず、
各種責任の損害賠償、業務上責任や民事上の慰謝料請求なども
請求されることがあります。
いずれにしても、労働災害が起きないように常に事業主の方は
環境改善に努めましょう。
行政書士&社会保険労務士 成瀬事務所
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